第84回選抜高校野球大会 石巻工・阿部翔人主将の選手宣誓

 第84回選抜高校野球大会が開幕した。

 「がんばろう!日本」の横断幕を先頭に、2年ぶりの入場行進も行われ、注目の選手宣誓。


 宮城県立石巻工業高等学校 阿部翔人(しょうと)主将(3年)の選手宣誓全文。

 

 宣誓!

 東日本大震災から1年。

 日本は復興の真っ最中です。

 被災された方々の中には、苦しくて心の整理がつかず、今も当時のことや亡くなられた方を忘れられず、悲しみに暮れている方がたくさんいます。

 人は誰でも、答えのない悲しみを受け入れることは、苦しくて、辛いことです。

 しかし、日本が一つになり、その苦難を乗り越えることができれば、その先に必ず大きな幸せが待っていると信じています。

 だからこそ、日本中に届けます。

 感動、勇気、そして笑顔。

 見せましょう、日本の底力、絆を。

 我々、高校球児ができること。

 それは、全力で戦い抜き、最後まであきらめないことです。

 今、野球ができることに感謝し、全身全霊で正々堂々とプレーすることを誓います。

  21世紀枠で出場が決まった石巻工業高校、そして、くじでは阿部翔人主将が選手宣誓を引き当てた。

 くじを引き当てた時、「もしかしたら、と予感があった」と胸中を明かした阿部主将。更に、松本嘉次監督は「神懸かっている」とまでも。

 

 チームには親族を亡くしたり、自宅が被害にあった部員が多い。阿部主将も津波で自宅が全壊。そのうえ、小学校の時、ともに白球を追いかけた同級生で石巻商軟式野球部の木村優斗さん(当時16歳)を亡くしたという。

 逆境の真っ只中で、石巻工業高校は昨年の秋季大会では準優勝を果たし、21世紀枠で選ばれた。

 「1年前は野球すらできないと思ったのに、甲子園に立って、メッセージも伝えられる。夢みたいだ」 「感謝の気持ちを忘れず、最後まで諦めない戦いをしたい」「被災地代表として、自分の気持ち、チームメートの気持ちを込めた選手宣誓を考えたい」。

 阿部主将は21世紀枠で選ばれた今回のセンバツ出場と、選手宣誓も引き当てた心境をこう語っていた。

 

 選手宣誓の冒頭の言葉には、今も言い知れぬ悲しみや苦しみを抱えた人々が大勢おられることを告げている。そして、彼ら自身もその当事者であることも。

 人を真に慰め、励ますことが出来るのは、同じ境遇を通過し、同じ心情を味わった人でなければ難しい。

 逆境の真っ只中に見を置く彼ら自身が、それを乗り越えようとする姿を通じて、日本中に感動、勇気、そして笑顔を届け、更に、世界中に最後まで諦めない日本の底力と絆を見せようと誓ったのだ。

 

 世界を見渡すと、貧困、飢餓、災害、暴力、紛争等で悲しみや苦しみの中で苦悩し続けている数えきれない多くの人々がいる。

 石巻工業高校をはじめとする高校球児たちのプレーが、日本のみならず世界中の一人でも多くの人に、希望と勇気を与えるものとなることを願ってやまない。