En-ichi 12月号【No.259】を読んで

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 ブータンのジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク国王(31)とジェツン・ペマ王妃(21)が国賓として来日され、凛々しい王と美しい王妃の仲睦まじいご夫妻が被災地を訪ね人々と接する姿には心が癒され、閉塞感に包まれた日本にさわやかな風を吹き込んでくださった。多くの日本国民が、そんな印象を抱いたのではないだろうか。

 

 ブータンは国民総幸福量(GNH)で知られている。これは、1972年に、ブータン国王ジグミ・シンゲ・ワンチュクが提唱した「国民全体の幸福度」を示す“尺度”である。国民総生産(GNP)で示されるような、金銭的・物質的豊かさを目指すのではなく、精神的な豊かさ、つまり幸福を目指すべきだとする考えから生まれたもので、1.心理的幸福、2.健康、3.教育、4.文化、5.環境、6.コミュニティー、7.良い統治、8.生活水準、9.自分の時間の使い方の9つの要素で構成されている。(wikipedia「国民総幸福量」から抜粋)

 

 ”Japan as №1”と謳われた時代から幾久しい。政治や経済の混乱は言うに及ばず、連日の様に殺人や人身事故によるダイヤの乱れが報じられる日本にとって、国民総幸福量という“尺度”とその考え方は、充分に効果のある処方箋の様に感じられる。

 更に、ブータン王国憲法を読むと、そこに家族を尊重する条文を見出すことができる。

 『国により、共同体生活の協働及び親戚観念に基づく家族の一体性に貢献する条件の発揚が最大限に邁進されなければならない。』【 新潟大学学術リポジトリ ブータン王国2008年憲法(2008年7月18日)第9条 国の政策の基本原理 第19節 より 】 国が家族をどこまで尊重するのかが、国づくりの根幹の様に思えてならない。


 En-ichi12月号(№259)掲載の八木秀次教授によるメイン記事(P.4~9)では、正にこの点について具体的に書かれている。タイトルは、「家庭基盤の充実」政策で国家崩壊の危機を乗り越えよ。

 大平正芳内閣(1978年12月~1980年7月)において、1980年5月29日に家庭基盤充実の研究グループが報告書を提出。以来、家庭を税制面で支えるなどの家庭基盤の充実政策が推進された。ところが、1994年社会保障制度審議会が『社会保障将来像委員会第二次報告』を提出して以来、大きく舵は切られ、世帯単位で国が保護してきたものを、個人に分割していく方向に一気に流れてしまった。目の前に山積する課題を解決した上で、多くの国の条文に書かれている家族尊重条項を日本国憲法にも設けるべきだと述べている。

 

 野田佳彦首相は『Voice』10月号に「わが政治哲学」という論文を発表し、「いまあらためて学ぶべきは、大平正芳さんの政治のあり方ではないか――私は最近、とみにそう思うようになった」と述べている。


 一方、谷垣禎一自民党総裁は平成22年党大会での年頭演説で次のように述べている。

 「家庭基盤を充実させ、地域から出発するという原点に立ち返りたいと思います。大平正芳元総理は「家庭基盤の充実」「田園都市構想」を提唱しました。それが「絆」を大切にする政治です。」【 自民党 Lib Dems 党大会 平成22年 総裁年頭演説<要旨> より 】


 いみじくも、ブータン王国ジグミ・ケサル国王は、来日中の11月17日、国会で行った演説の中でこう述べている。

 『いかなる国の国民も決してこのような苦難を経験すべきではありません。しかし仮にこのような不幸からより強く、より大きく立ち上がれる国があるとすれば、それは日本と日本国民であります。私はそう確信しています。』【 「国民総"幸福"量」を重んじるブータン国王が国会で演説 全文 より 】


 東日本大震災以降、家族や地域の絆の大切さが声高に叫ばれている。

 国家崩壊の危機を救い、国民が仮初ではない本当の幸福を実感する社会を築き上げるべく、最悪を最善に変えるチャンスが今だとしたら、その鍵を握るのは、「家庭基盤充実」の哲学であり政策だと確信した。

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